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2021.11.12
スポット情報
rider:マジ山田
今年も早いもので、気が付けばあと二ヶ月を残すのみとなってしまった。
昨年に引き続き、2021年はCOVID19に振り回される一年であった。ワクチンのせいなのか、ウィルスの気まぐれのせいなのか、真相は定かではないものの、こと国内においては忌まわしきウイルスによるパンデミックも(束の間の?)落ち着きを見せつつある。
それに伴って、マスク着用や消毒、ソーシャルディスタンスに配慮しながらではあるものの、休日の外出を伴うアクティビティもだんだんと楽しめるようになってきた。
今朝見たテレビのニュースでは、「春から初夏にかけて一度は中止になってしまった学生たちの修学旅行ですが、季節を秋に仕切り直して再開する学校が増えてきています」と綺麗な声のアナウンサーが話していた。
青春時代に失われる二年間と、おじさんになってから失われる二年間の比重は、鉄と木片ほどに違うはずだ。ひょっとしたらそれ以上かもしれない。社会人以上に我慢を強いられてきたであろう子供たちが、友人たちと大切な体験を共有することができるのは、手放しで喜ばしいことだ。
思えば、僕の中学校の修学旅行もちょうど今くらいの肌寒くなりはじめた季節だった。
「おまえの好きな子教えろよ!」
「そんなの、いるわけねえだろ。うちの学校の女子、みんなダサいじゃんか。安田はどうなんだよ!」
「おれはサキちゃん!サキちゃんとやりたい!サキちゃんとやりたい!」
美しかった景色よりも、友人とのくだらない会話ばかりを思い出してしまうのは、きっと僕がまだ幼かったからだろう。
知らない場所の、知らない時間を、知ってる人と共に過ごす。まるで永遠かのように感じた今が、いつか終わってしまうことも想像できないまま、僕たちは修学旅行のしおりに書かれた入浴時間のルールを無視して、ホテルのでっかい風呂に飛び込んだのだ。
◆◆◆
10月の終わりの季節、久しぶりにキャンプツーリングに出掛けてきた。
場所は岐阜県高山市にある奥飛騨温泉郷オートキャンプ場だ。(温泉郷は「おんせんごう」と読むそうな。)以前にも利用したことがあるのだが、これが実に良いキャンプ場なのである。ロケーションや設備はもちろんのこと、周辺の道も楽しく走ることができる。
高山市は古い町並みや合掌造りで有名な白川郷、絶景を楽しめる新穂高などなど、観光資源にも恵まれており、昔から好きな場所でもある。
天候にも恵まれ、とても満足感のあるキャンプだったので、フィールドレポートという形でここに残しておこうと思う。
南から奥飛騨を目指す道中はせせらぎ街道を利用するのが良いだろう。緑と川に囲われたゆったりとしたカーブが心地よく、東海地方の名道として名を馳せている。あまりタイトなコーナーはないため、人によっては物足りないということもあるかもしれないが、多くの荷物を積載したキャンプツーリングではちょうど楽しめる塩梅である。
この日は10月末ということもあり紅葉を見に来た車で混み合っており、快走することは叶わなかったものの、赤く染まりはじめた景色を存分に満喫することができた。
今回はスルーしてしまったがせせらぎ街道のおすすめスポットのひとつに「ライダーズカフェ・アグスタ」がある。せせらぎ街道を走るライダーの憩いの場であり、60〜70年代の古いバイクの展示も行われているなんとも素敵な場所なのである。
時期によっては名前に冠しているMV AGUSTAの名車750Sの展示が行われている。僕も以前一度見に行ったことがあるのだが、ディスコ・ボランテ(空飛ぶ円盤)と呼ばれるエラの張ったタンク、砂型で作られた空冷四気筒、青・赤・白というイタリアンには珍しいパターンのトリコロールカラー等々、見どころ充分で美しいモーターサイクルであった。
冬季は営業していなかったり、展示されているバイクも時期によっては異なるので、尋ねる前には一度公式サイトをチェックしておくと良いだろう。
https://www.cafeagusta.com/
せせらぎ街道の道沿いには所々に車やバイクを止められる箇所があるので、紅葉と一緒に愛車を撮影するのがいいだろう。
僕も紅葉を背景にバイクの写真を撮ったので、秋のせせらぎ街道の美しさとともに、僕の愛車をここで紹介しようと思う。
バイクにマウントしてナビとして使っていたiPhoneのカメラがバグってしまったため、少々分かりにくいかもしれないが、紅葉のように真っ赤な車体のDUCATI SS900ieだ。トラスフレームの美しさがお分かりいただけるだろうか。
バイクの振動でiPhoneのカメラが壊れるという噂は聞いたことがあったが、きっと大丈夫だろうと高を括っていたところがある。失ってはじめて、iPhoneの存在の大きさに気がつく。
タイミングの悪いことに、出発前日にデジタルカメラを充電したまま家に忘れてきてしまったため、ここからのレポートは狂ったiPhoneの写真でお届けせざるを得ない。分かりにくいとは思うが、iPhoneを失った悲しみに免じてどうか許して欲しい。
さて、せせらぎ街道で高山まで北上したら、158号線、471号線を通って奥飛騨を目指す。北アルプスの手前に差し掛かってくるので、景色のスケール感が大きくなるとともに、気分が高揚してくるのが分かる。この季節には北アルプスの山々に雪がかかり、紅葉で赤く染まった目の前の山との対比を楽しむこともできる。(残念ながら写真はない。)
キャンプ場に着く前にはAコープ奥飛騨店に寄って食材を調達すると良いだろう。ここはキャンプ場からほど近い場所にあるので、チェックイン後にやってくるのにも適した立地だ。
僕らもAコープで一通りの食材を買い揃えた。旅先のスーパーマーケットというのは、普段見慣れない食べ物などが売られており、旅行の高揚感も手伝って、ついつい余計なものまで買ってしまいたくなる。
他に何か変な食べ物はないかなんて思いながら、なんとなく店内をまわっていると、レジの前の乾電池コーナーに懐かしいものを見つけた。
FUJIFILMの使い捨てカメラ「写ルンです」だ。スマートフォンの普及によって、すっかりその存在を忘れてしまっていたが、iPhoneがバグった今の僕にはちょうどいいアイテムだ。僕は中三の修学旅行以来、実に約15年ぶりに写ルンですを買い物カゴに入れることになった。
さて、カメラを手に入れることができたので、ここから先の写真は写ルンですで撮影したものとなる。解像度は低いかもしれないが、ブレブレの写真よりは幾分かマシなはずだ。
Aコープから数キロ走れば道の駅奥飛騨温泉郷上宝に到着する。実はこの道の駅、目指していたキャンプ地である奥飛騨温泉郷オートキャンプ場の入り口になっているのだ。物産館もあったりして、地場のちょっとした食材やお土産を調達することもできる。
キャンプ場のチェックイン開始の時間帯には受付が結構込み合うので、少し時間をずらすのも手かもしれない。
サイトは3つに分かれていて、電源の使用可能なサイト1、電源なしで炊事場などの施設に近くて便利なサイト2、敷地の真横を流れる川に近いサイト3という構成となっている。
僕たちが今回、というか、ここにくる時にいつも選ぶのはサイト3だ。施設からは少し離れるものの、開けた眺望と、川を間近に感じられるおすすめのサイトである。バイクで来る人のほとんどは、サイト3を使っている印象がある。
施設の写真もいろいろ撮ってみたのだが、写ルンですを使いこなせず、何が写っているのかさっぱり分からないものだらけであった。写ルンですでの室内撮影は、基本的にフラッシュを焚く必要があるようだ。
キャンプ場の詳細な情報は下記に分かり易くまとめられているので、そちらを参照してほしい。
この日は初めてお会いするK村さんとその愛車KTM 790 adventureも一緒だ。
790 adventureは同社の790 dukeのパラツインエンジンをベースとしたアドベンチャーツアラーである。初めて見たが、結構デカい。
20Lのタンクに加えて燃費もかなり良いようで、1回の給油で400km以上走れてしまうそうだ。今回の一泊二日のキャンプの間にも、K村さんは給油をせずに乗り切ってしまった。2回も給油した僕のSS900ieとは大違いである。
実は以前、鈴鹿サーキットでの試乗会で790dukeに試乗したことがあるのだが、そのときに驚いたのはエンジンのドコドコ感である。パラツインなのになんでなんだと思ったのだが、後日調べてみるとこのエンジンは75度位相というちょっと変わったクランクを採用しており、並列でありながら不等間隔爆発なのである。不等間隔爆発の音や地面を蹴る感覚が好きで、Vツインばかりに乗っている僕にもグッとくるエンジンなのである。
(以前試乗会で撮影したKTM duke 790)
dukeしかりadventureしかり、KTMのバイクは共通のデザインコードにのったような個性的で新しいデザインが目を引く。知っている人も多いと思うが、KTMのバイクのデザインはキスカというデザイン会社によるものである。日本でいうとヤマハとGKデザインのような関係だろうか。そういえば並列エンジンに不等間隔爆発を採用するのもヤマハの十八番だった。
最近では若い人が390dukeに乗っている姿を街でよく見かけるようになった。きっと、中免をとったばかりのかつての僕らが持っていた「とにかくカッコいいバイクに乗りたい」という気持ちに、ダイレクトに訴求するのだろう。
奥飛騨温泉郷オートキャンプ場の最大の目玉といえば、やはりキャンプ場内に天然温泉があることだろう。
浴槽は潔く露天風呂ひとつのみ。空を見上げるとモミジの木があって、紅く染まった葉を眺めながら気持ちよく入浴することができる。もう少し後の季節になれば、湯面に浮かぶモミジを見ることもできるだろう。
注意点としては、温泉自体には体や髪を洗う場所が用意されていないことが挙げられる。その代わりに脱衣場には200円で使えるシャワールームが併設されている。ドライヤーの使用料も100円なので、風呂に入る前には100円玉をたくさん用意しておく必要があるだろう。
キャンプ場の利用者は朝6時から、夜10時まで無料で入浴することがでるため、僕は初日の昼、夜、二日目の朝と合計三回利用させてもらった。
初日のお昼は偶然にも他の入浴客はおらず、温泉を一人で満喫することができた。中三の時みたいにウォーターボーイズで学んだバレーレッグでもかましてやろうかと思ったけど、僕ももう30だ。今日はゆっくり、温泉と紅葉を楽しむことにしよう。(ウォーターボーイズシリーズはヒロインを演じる平山あやさんが最高にキュートな映画版がおすすめである。)
10月末の飛騨高山ということで、夜から明け方にかけて気温が低いことを懸念した僕は、所持している装備の中で出来る限りの冬仕様でキャンプに望んだ。
結果として、思っていたより気温は下がらず、風もなかったこともあり、睡眠を含めて快適に過ごすことができた。正確な気温は分からないが夜中で一桁台の前半くらいだろうか。
寝具はいつも使っているイスカのアルファライト700Xである。(というよりこれしか持っていないのだが。)シュラフは-6度まで対応らしいがあくまでスリーシーズン用で少々心許なかったため、ロゴスのゴム製湯たんぽを購入して行った。
これがなかなか正解で、寝る前に足元に入れて朝まで温かさをキープしてくれたし、折り畳めて嵩張らないためキャンツーにはもってこいだ。
シュラフに入るときにはもちろん着てきたバイクウェアを着込む。この日の僕のウェアはこんな感じだ。
・クシタニ/ウィンターアメニタジャケット ・クシタニ/エクスプローラーライドジーンズ
さらにその下には冬用のインナー類を着込んでいる。 ・ミズノ/ブレスサーモアンダーウェア ・ワークマンのパッチ ・ワークマンの中綿ズボン
他にもホッカイロをたくさん持っていったが、結局使わずじまいであった。
気温がそこまで下がらなかったこともあり、夜にはゆっくりと食事とお酒を楽しむことができた。
(フラッシュを焚き忘れた焚火の写真。)
炎のゆらぎが心地よいですねとK村さんが言った。
炎の揺れ方や星のまたたき、波の音や木漏れ日には1/fゆらぎというリズムが隠れているという。壊れかけのiPhoneで1/fゆらぎについて調べてみると「スペクトル密度が周波数fに反比例するゆらぎのこと」だそうだ。一体なんのこっちゃって感じだ。
(Lntern Ridersのライターしどびしゃすさん撮影。このキャンプ場は星空も抜群なのだ。)
あたりが静かになってくると、川の音が意外と大きいことに気がつく。結構な音量なので、気になる人は川沿いのサイトを避けて選んだ方がいいかもしれない。
僕は眠るときにも全然に気にならず、心地よささえ感じた。(酔ってただけかもしれないが。)水と水のぶつかり合うノイズに包まれながら、川の音にもゆらぎがあるのだろうかとか、そんなことを考えているうちに、いつの間にか眠りについてしまった。
2日目。帰る前にはキャンプ場から少し寄り道して北アルプス大橋を目指す。
北アルプス大橋は全長150m、高さ70mの橋で、その名の通り、北アルプスの山々を望むことのできる有名な絶景ポイントだ。タイミング次第では橋の脇にバイクを停めて雄大な峡谷を背景に写真を撮ることもできる。(他の利用者の邪魔にならないよう十分に注意が必要である。)
山やバイクの写真を撮っていたら、写ルンですを使い切ってしまった。
今回僕が買った写ルンですは27枚撮りのタイプだ。といっても、調べてみたところ、以前は39枚撮りや高感度版などのバリエーションがあった写ルンですシリーズであるが、今は27枚撮りのスタンダードタイプ以外は絶版になってしまったようだ。
27枚という枚数はひとつの旅にちょうどいい数字なのかもしれない。明日はあそこに行くから、今日は何枚までにしとこうとか、失敗している余裕はないぞとか、そんな風にして旅のシーンの一つ一つを吟味しながらカリカリとフィルムを巻いてシャッターを切る。
大容量のSDカードやスマートフォンに慣れてしまった僕には、その行為さえも愛おしく思えた。懐古主義とかそんな言葉で片付けてしまうには、ちょっと惜しい感覚だ。
こうして記事を書きながら出来上がった写真を眺めていると、チープな写ルンですで写した写真は、目に見える物を写しきってはくれないけれど、目に見えない、それこそゆらぎのような物をとらえてくれているような気がした。
先日久しぶりに実家に帰省した際、母からなにやら写真を手渡された。
僕が昔使っていたナップサックから写ルンですが発掘されたというのだ。現像された写真をめくっていくと、中三で行った京都の修学旅行に持って行った時のものだということが分かる。
金閣寺や清水寺、二条城、ブレてしまって何が何だか分からない物体、同じホテルになった他校の女子に頼んで一緒に撮ってもらったもの、余ったフィルムで撮ったであろう近所の犬、誰かのケツの穴。当時の僕が吟味したであろう27枚の記録がそこにあった。
その中の何枚かには、たまたま修学旅行で同じ班になった、当時好きだったサキちゃんの写ったものもあった。隣の席から見えた長いまつ毛に見惚れたこと、消しゴムを拾ってあげたときに少しだけ触れた指が細かったこと、卒業アルバムに映るサキちゃんの写真を見ながら覚えたての床オナニーをしまくったこと。忘れていた記憶の引き出しがひっくり返されていく。
修学旅行が終わると、サキちゃんはバスケ部のエースと付き合い始めた。僕が安田のケツの穴を爆笑しながら撮影している間に、同じ建物のどこかではバスケ部のエースがサキちゃんに告白していたのだ。
楽しかった思い出も、切ない思い出も、全てが急に懐かしくなった。みんな今ごろ何をしているんだろうか。当時のことが急に懐かしくなってしまい、登録したっきり何年も放置したままのFacebookにログインしてみた。こんな僕でも地元の知り合いから何件もの友達申請が来ていて、ワクワクしながら一人一人のページにアクセスしてみる。
学年一のイケメンだったバスケ部のエースはビジュアル系メイクにハマっていて、アナウンサーになるのが夢だったサキちゃんは地元でキャバ嬢になっていて、仲の良かった安田は陰謀論に夢中らしい。
SNSやマッチングアプリが当たり前になった今では、出会うはずのなかった人と出会える機会は増え、今生の別れみたいなものはほとんどなくなったように思う。それは素晴らしいことである一方で、出会いの喜びと別れの美しさを希薄化させてしまったのかもしれない。
友達申請を全て却下して、僕はFacebookをログアウトした。きっともうログインすることはないだろう。
さようなら、僕のアイフォン。さようなら、僕の初恋。さようなら、僕の青春。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!
この記事を書いたRIDER
マジ山田
東海地方在住のサラリーマンライダー。週末はバイクに乗ったり、キャンプをしたり、motoGPを見たりしている。愛車はMOTO GUZZI 1100 sportとDUCATI SS900ie。
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